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110話 偽りの仮面

مؤلف: 白蛇
last update تاريخ النشر: 2026-02-21 17:02:13

 遙か頭上で揺らめく松明が数を増していく。瑞礼たちの足跡を辿ってきたのであろう。雪道に残された痕跡は、隠しようもなかったのだ。

――瑞白が危ない。

 瑞礼の胸が万力で締め上げられるように痛む。瑞白は逃げ切れるだろうか。もしや、もう捕らえられてしまったのか。それとも――。

 しかし、瑞礼の焦燥とは裏腹に、朝廷兵たちが動き出す気配はなかった。彼らは崖の縁を行き来し、底の様子を窺っているようだ。

 やがて数本の松明が投げ込まれ、淵の底を赤く照らし出した。崖上から兵たちのざわめきが降ってくる。

「おい、やはり底に誰かいるぞ!」

「あの白い狩衣……間違いない、玄明親王殿下だ!」

「生きておられたぞ! 坂上将軍にお知らせしろ!」

 朝廷兵たちは、まだ事態を正確に把握していないようだ。

 彼らにとって玄明は味方であり、丁重に扱うべき高貴な存在だ。まさか正気を取り戻し、その身に龍の魂を宿しているとは夢にも思わないだろう。

 緋宮は瑞礼の肩を抱き寄せ、

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  • 龍君の花嫁代わり   112話 千年の契約 - 第二世 完

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  • 龍君の花嫁代わり   88話 雪上の朱

     木戸の奥、分厚い格子を、秀衡の兵らが二人がかりで引き開ける。 瞬間、冷え切った石室から、灼熱の暴風が吹き荒れた。 音を立てて熱気が噴き出し、庭の雪が一瞬で舞い上がる。瑞礼は思わず腕で顔を覆った。「――っ、緋宮様……!」 灯明の揺れる薄闇の底。そこに緋宮はいた。 その姿は、壮絶の一言だった。 首と両手首、そして胴に巻かれた鉄鎖は極限まで張り詰め、石壁に打ち付けられた楔が今にも抜けんばかりにきしんでいる。 白い肌には赫々たる鬱血の痕が

  • 龍君の花嫁代わり   87話 葬列の行軍

     瑞礼は乱れた呼吸を整え、静かに傀儡を見据えた。  左肩に刻まれた徴が、いまも衣の下で脈打ち、熱を放っている。その熱が瑞礼の全身を流れる血を清め、秀衡の放った毒や泥の冷気を焼き払っていた。 魂の芯に、緋宮が楔のように打ち込まれているのを感じる。 「俺のものだ」と告げたあの傲慢なまでの響きが、瑞礼の足元を支える揺るぎない理となっていた。 瑞礼は、目の前で身悶える泥の似姿へと手を伸ばしかけ、そして止めた。  その眼窩から溢れる黒い泥は、主への愛と、報われなかった忠義を汚された、女たちの涙に他ならない。

  • 龍君の花嫁代わり   84話 血の轍、鉄の鎖

     広間の空気が、音を立てて凍りついたようだった。 藤原秀衡の放った言葉は命令というよりも、逃れ得ぬ呪詛のように瑞礼の鼓膜を震わせた。「龍神をこの地に繋ぎとめる、鎖としてな」 その響きは、瑞礼の胸元で震える小鈴の硬質な音色と重なり、心臓ごと魂を鷲掴みにされたかのような錯覚を覚えさせた。言葉がそのまま実体を持った冷たい鎖となり、瑞礼の首筋から全身へと、じりじりと巻き付いていく感覚。 ――鎖。花嫁。 その単語が、瑞礼の脳髄の底に沈殿していた記憶を強引に引き摺り出す。遠い飛鳥の夢。都の石造りの井戸の底。白衣を纏

  • 龍君の花嫁代わり   83話 魔王の宣告

    「瑞礼を、離せ」 それは叫びではなかった。だが、その声はうねる地脈のように低く響き、扉の板を震わせる。押さえつける兵たちの骨の髄まで冷やし、互いに顔を見合わせていた。「そこにいるな。……瑞礼に、触れているのは誰だ」 緋宮の姿は見えない。それなのに、分厚い木戸の隙間から漏れ出す気配だけで、兵たちの動きが凍りついた。 殺気。緋宮が発する純粋な殺意の塊が、扉越しに瑞礼を押さえつける兵の首筋を、冷たい刃のように撫でたのだ。「その手を離せ。……瑞礼に指一本でも食い込ませてみろ

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